再検査当日
再検査を受けに家の近くの総合病院へ。
10時までに到着すればよいものを、なぜか1時間も前の9時に病院へ到着。
予約してあっただけにすぐに名前を呼ばれ、担当医の先生とはじめてそこで面識を持つことに。
同世代(30代)もしくは、年下か?
無精ひげを生やして白衣を身にまとう様子が大人びて見えるためか、年上にも見える。
先生との信頼関係
席に着くなり、いろいろと質問をされた。
10分ぐらい質問されただろうか。
在職している会社での職種や職歴、前職の話や学生時代の話などなど。
なぜそんなことを聞かれるのか疑問に感じつつも質問に回答していくと、最後の方で先生からこれらの質問の意図を説明された。
どうやら、定期的に健康診断を受けていた時期を知りたかったようだ。
学生時代や社会人になってからは定期的に健康診断を受けていたかどうか。
受けていた際に異常は見受けられたか。
受けていなかった期間は体の調子が悪くなったりしていなかったかなど。
なるほど、そういうことが知りたかったのかと納得。
当然ながら、一般的な先生と患者の質疑応答もあった。
家族で同じような症状の方はいるか?
家族で●●病や●●病を患った方はいるか?
なかでもハッとさせらた質問は、
入院したり一般的な風邪以外で体調を崩したことがありますか?
ありません。
あなたに記憶がなくても、小さい頃にそういったことが起きたことはありませんか?
大病を患ったことがないので、ないはずです。
大病というのは人によって温度差があるため、どんな些細なことでもいいから身に覚えがあったら教えてほしいし、今日じゃなくもいいから親御さんに確認して教えてほしい。
思わず、我に返った。
長い質疑応答に嫌気がさしてしまったのか、面倒だと感じた自分がいたのかもしれないと。
こんなに親身に細かく聞いてくれている先生に対し、何をやっているのだと恥ずかしくなる。
こちらは再検査を受けに、ありとあらゆる角度から体に異常がないかを診てもらう立場であることを改めて痛感するとともに、心を入れ替えて先生の質問に回答していく。
このやり取りで、先生に対して勝手に作っていた自らの壁を一つ取り除けた気がした。
尿検査
先生がいうには、一般的な健康診断で行う尿検査は、リトマス試験紙のようなものを用いて尿たんぱくの数値を測るという。
リトマス試験紙のようなものの色がどれだけ変化したかという判定方式のため、検査する人によってその数値が流動的となることもあるようだ。
そのため、今一度採尿を行い、尿たんぱくの数値をしっかりと測定できる機械で検査をし直しましょうと言われる。
この尿検査の数値が異常であった場合、採血などの検査に進んでいくという流れだ。
分かりました。よろしくお願いします。と返事をし、検査を進めていく。
病名が判明
採尿を行った後に腹部のエコーを受け、診療室に戻る。
すると、看護師から
「尿検査の数値がよくなかったのでもう一回採尿しましょう」
「あと、採血もしましょう」といわれる。
やはり体の調子が悪いようで、不安が増していく。
言われるがままに再び採尿をし、その後採血をして診療室へ戻る。
そして、先生から「ネフローゼ症候群」であると告知される。
初めて見聞きする病名のため、何度も先生に聞きなおし、その病名を頭に叩きつける。
先生が書類を取りに席を立ったすきを見て、携帯でネフローゼ症候群のことを調べる。
とても一度で覚えきれない内容でさまざまなことが書かれているなかで、検査入院で1週間ほど入院が必要といった文字がやけに目立って見えた。
すかさず、妻に入院になるかもしれないことをラインで伝えようとしたが、そのことをラインで送ったら検査入院が現実になってしまうのではないかと思い、メッセージを消して先生の帰りを待つことにした。
その後すぐに先生が戻ってきて、ネフローゼ症候群について分かりやすく説明をしてくれた。
ネフローゼ症候群といってもいくつか種類があるようで、腎生検という精密検査をしてからでないと治療法を決められないというのだ。
腎生検という検査についても詳しく説明が始まった。
背中から針状の医療器具を刺し、腎臓の組織を採る検査のようだ。
過去に約3万人の方がこの検査を受けているようだが、不幸なことに2人の尊い命がこの検査によって奪われたことも知ることになる。
そして、この検査の後は絶対安静であり、1週間の入院が必要になると告げられらた。
ラインを送ろうが、送らなかろうが、結局は入院を避けられない。
当然と言えば当然だが、そんな藁にも縋る思いになるほど気持ちが弱っていたのかもしれない。
そして、入院の日程や入院前の検査、今日これから行う検査など、さまざまなことが次々と決まっていく。
会社には午前半休を申請したのみであったため、何時に出勤できるか分からないことを報告する。
そして、妻にネフローゼ症候群と診断されたことと、検査入院で1週間の入院が必要になることをラインで伝えた。詳しくは家に帰ってから話すと。
再検査を終えて
この日、すべての検査が終わったのが15時半過ぎ。
午前中は患者で混雑していた病院も、今となっては静まり返り不思議な感じがした。
お会計もほとんど待つことなく、すぐに病院を出ることができた。
前日の夜9時以降から何も食べていなかったため、空腹感が若干あったものの、不思議と何かを食べようという気にはなれなかった。
いままでは塩分やカロリーなど一切気にすることなく、好きなものを好きなだけ食べてきた。
濃い目の味付けが好みの私に対し、妻は口酸っぱく塩分の取り過ぎには気を付けるよう注意してくれていたことを、とても心苦しく思い出す。
これからは厳しい食事制限が始まるんだろうな。と考えると、なぜか急に空腹感が増していく。
病院のそばには、私の大好きなお好み焼き屋がある。
ここ数年行けてなかったこともあり、食べていこうか悩む。
普通の神経をしていたら、ここでお好み焼きはないであろうと自分に言い聞かせるものの、空腹感は一秒ごとに増していく。
この時間だから開店しているわけないな。万が一、店が開いていたら食べていこう。
自分なりにハードルを上げたつもりが、なんと店が開いていた。
誘惑に負けたわけではない。
明日から厳しい食事制限が始まるため、これが最後の贅沢だ。
ダイエットが成功しないダメな人の典型的な考え方だ。。。
完全に誘惑に負けてのれんをくぐる。
店主が、高校野球の中継を見ていて、驚いた様子でこちらを見る。
おそらく、16時前のこの時間帯にくる客は珍しいのだろう。
早速席に着くなり、メニューを見渡す。
食べたいものがたくさんあるが、一番シンプルなお好み焼き1枚を注文。
とても空腹感を満たせるような量ではないが、さすがの私もここで腹いっぱいにお好み焼きを食べることはできなかった。
どうしようもない私にも少しは自制心があったのだと、過保護な親のような目線で振り返る自分に対し嫌気がさす。
そして、お好み焼き屋を出て会社に向かう。
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