身動きが取れない絶対安静の長く辛い夜。
身動きが取れるようになった日中。
大げさかもしれないが、天国と地獄を体感したような、そんな一日でした。
先生の診断
朝8時ごろ、夜勤で何度も私の背中に枕を入れたり抜いたりしてくれた看護師の方が来て、「あと1,2時間で先生がくるはずだから頑張って」と言ってくれた。
シフト交換の時間で、この看護師の方はこれにて退勤となるようだ。
仕事と言ったらそれまでだが、本当に辛い時間帯を助けてもらった。
本当に感謝している。
感情を表に出すことを苦手とする私の気持ちがどれほど伝わっているか少し不安になった。
だったら、この時ばかりはしっかり感謝を伝えろよと自分に突っ込みたくなる。
10時前だったろうか、先生が病室に入ってくる。
血尿がないかどうかなどの細かいチェックが始まる。
先生のOKがでれば、起き上がって部屋の中にあるトイレと洗面所までは歩けるようになる。
心の中で「お願いします。お願いします。」と何度もOKがでることを願った。
そして、先生のOKがでた。
これで歩ける。
これで体を動かせる。
これで点滴や尿道カテーテルを外せる。
地獄から一気に天国へ移動したような気分だ。
腎生検後、初めて体を動かす
まず、尿道カテーテルを外し、その後、点滴を外していただく。
看護師の方々に支えていただきながら、徐々に体を起こしていく。
まともに体を動かすのが約24時間ぶりのため、体が痛いもののとても気持ちいい。
何とも言えない感覚だ。
まだ歩いていいのは部屋の中だけですよ。
分かりました。十分です。
明後日ぐらいになれば、このフロア内だけであれば少し歩いてもいいですよ。
えっ、本当ですか?
ただ、1週間は安静が基本なので絶対に無理はしないでくださいね。
体を動かせることがこんなに幸せなことなのだと感じたのは初めてだった。
朝食
腎生検を受けた日に昼食と夕飯がでたが、ほとんど手を付けることができなかった。
なので、まともに食事をとるのはこの日の朝食がはじめて。
でも不思議なことに、あまり空腹感はなかった。
ちなみにこの日の朝食はこんな感じです。
ネフローゼ症候群に食事療法は必要不可欠のため、低たんぱく、低塩分の料理だ。
カロリーは500kcalちょっと、塩分は1gちょっと。
いままで食べてきた食事とはまるで違う。
病気が快方に向かうまでは、こういった食事制限が続くのだと改めて実感した瞬間だった。
妻と長女が病院へ
昼過ぎぐらいだったと思う。
妻が春休み中の長女を連れて病院に来てくれた。
とても嬉しく感じた。
思わず長女を抱きしめた。
長女は私が入院する前、何枚もの手紙を書いてくれた。
なかには写真付きの手紙もあった。
家族旅行で撮った、長女が大切にしている家族写真だ。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。
昨夜はあんなにも時間が過ぎるのを遅く感じたのに。
妻と長女はバイバイといって家に帰っていった。
疲れもあり、早々に就寝準備
昨夜はほとんど寝ることができなかったため、妻と長女が帰ると突然眠気が襲ってきた。
今日は早く寝ようと思っていた矢先、私の担当医とは別の先生が病室に入ってくる。
向かいのベットのAさんと話があるようだ。
Aさんは、私よりも2日前に腎生検を受けており、事後の辛さなどを事前に教えてくれていた。
腎臓がわるいであろうことは想像していたが、思ってた以上であった。
現在飲んでいる薬で数値が改善できていないことを先生がAさんに告げる。
おそらく、前段の話が過去にあったのであろう。
沈黙の時間の長さががその深刻さを物語っていた。
先生は「家族を呼べる日があれば教えてほしい」と言う。
Aさんは「確認してみる」と言い、先生との話は終了した。
しばらくしてAさんは家族に電話をした。
「どうやら透析が必要になるらしい。」
「先生がお前たちに話をしたいそうだ。」
Aさんの声を聞いているだけで胸が締め付けられる。
そして、今度は隣のベットのBさんが奥さんと話している会話が聞こえてくる。
どうやら、がんを患っているようだ。
動けるようになり、喜びを感じていたのつかの間。
浮かれていた気持ちが一気に沈み始めた。
不安との闘いが始まる
重度のネフローゼ症候群では、やがて透析になる可能性も少なからずあることは理解していた。
ただ、それ以上のことは調べていなかった。
どこかのサイトで、ネフローゼ症候群の完治確率は70%という数値を見て、どこか安心していたからであろう。
その完治率の根拠は?
完治するまでにどの程度の期間を必要とするのか?
そもそも、私はどのステージのネフローゼ症候群なのであろうか?
急にいろいろと不安になり、ネットでネフローゼ症候群について詳しく調べた。
そこで初めて知ることもあった。
一度完治しても再発する恐れがある病気であること。
治療が長期間におよぶケースがあること。
治療で用いることのあるステロイドの副作用。
調べれば調べるほど不安になる。
つい先ほどまでの眠気が嘘みたいにどこかへいってしまった。
そして、深夜2時まで眠ることができなかった。
私が知る限りの知識はネフローゼ症候群とは?に記してあるため、参考までにご覧ください。
現状を知らないことの不安
先生とじっくりこの病気について相談する機会はいままでに何度もあったはず。
だけど、私は相談という相談をしてこなかった。
自分の弱い部分を見せるのが恥ずかしかったのかもしれない。
いい大人が逆に恥ずかしい。
不安をさらけ出し、この病と向き合うことができていなかったのだ。
明日先生に会ったら今の不安な気持ちを伝え、自分の置かれている状況を認識しようと決めた。
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